新しい日琉諸語の辞書の紹介

Salvatore

新しい日琉諸語の辞書の紹介

はじめに

今日は私の現在のプロジェクトを紹介します。

2020年4月から、日本学術振興会特別研究員として、九州大学の下地理則氏とともに、新しい日琉諸語の電子辞書を作成しようとしています。

このプロジェクトのきっかけは、私が研究してきた沖縄語伊平屋方言の辞書を作りたかったことです。伊平屋方言は沖縄県伊平屋村で話されています。伊平屋村は沖縄北部本部の近くにあり、伊平屋島と野甫島からなります。伊平屋には田名、前泊、我喜屋、島尻、野甫という5つの集落があります。

伊平屋の位置(グーグルマップから)
野甫島から見た伊平屋島

1つの言語を記述するには記述文法書、テキスト、辞書が必要だと言われています。私は博士論文としてテキスト付きの伊平屋方言の記述文法を作ったので、次なるステップは辞書の作成でした。形として電子辞書を作ろうと思いました。

その理由は、オンライン電子辞書はメリットが多くあるからです。まず1つ目として挙げられるのは、検索ができることです。そして、音声、動画なども載せられます。そして、作る側から見ると、語彙項目の変更や修正、変更も随時できるメリットがあります。また、紙の辞書は出版されるまでの過程は、かなり長いこともありますが、オンライン電子辞書はそれほど時間がかからないでしょう。

この辞書はまず伊平屋方言の辞書として公開する予定ですが、そのあとは九大の下地ゼミを中心に、他の地域のデータを追加し、通言語的辞書に拡大するという計画です。来年から外部からのデータも受け入れて、どんどん拡大していく予定です。

辞書の紹介

以下は辞書の機能を紹介します。検索画面と各語彙項目の画面を見せます。

検索画面

検索画面は以下の通りです。「表示設定」では表示される情報を未表示にできて、自分が見たい情報だけが表示されるようにできます。「検索対象」で見られる通り、多くのフィールドを検索対象にできます。正規表現も使用できて、例えば特定の分節音で始まる語彙とか、特定の音節構造で終わる語彙を検索できます。まだ設定中ですが、様々なフィルターをかけて検索できます。予定としては少なくとも地域、系統、品詞、意味分類です。以下の画像で例えば沖縄で伊平屋、福岡で柳川(データは下地ゼミの松岡葵さんに提供していただきました)が見られます。

辞書の検索画面

CSV exportのボタンにクリックすれば、ダウンロード結果をダウンロードすることができます。こうすると、オフラインのときなどにデータを調べられます。検索結果もダウンロードできるのはこの辞書の新しい特徴です。

動詞、形容詞の活用形からの検索も可能です。以下、動詞tatin「建てる」の過去形tatitanから検索した結果、tatinのページが表示されます。

語彙項目の画面

語彙項目の画面は以下のとおりです。

語彙項目の画面

見られるとおり、品詞からアクセント型まで、多くの情報が載せられます。音声も付いていて、画像、動画も載せられます。青くなっている、クリック可能のものにクリックすれば、その検索条件のページにいけますので、例えばここでアクセント型cにクリックすれば、下の方のようなページが出ます。

この画像は古いバージョンのものですが、これからは色々情報を追加する予定です。例えば、動詞の場合は動詞の語幹情報(子音語幹とか)を追加する予定です。データベースが拡大していったら、データ提供者情報なども、追加する予定です。

例文もついていて、各項目に3つまで搭載可能です。音声をつけることができます。この辞書の特徴の1つは、グロスがついていることです。そして、このグロスにクリックすれば、その項目のぺージに直接いけますので、例えばここのjam-の部分をクリックしたら、動詞jamunのページにいきます。

ちなみに、接辞なども検索対象です。こうして、例文にある単語を一つ一つ調べる必要がありません。

辞書の拡大

このオンライン電子辞書の公開は、2022年度末までに予定しています。前述したとおり、まず九州大学の下地ゼミを中心に拡大し、そして来年から外部からデータを受け入れる予定です。語彙のリストは特に決まっていないので、自分が持っているデータでなんでもOKです。手続きもできるだけ簡単にする予定です。こちらでは入力用のエクセルを作っていますので、よかったらそれを記入してもらえますし、自分が作ったファイルでも問題ありません。ここで見られる列をすべて入力する必要はありませんが、少なくとも音素とIPA情報があればありがたいです。

基本的な入力テンプレート

詳しく知りたいかた、将来的に自分のデータを載せたいという方が、カルリノまでご連絡ください 。nanajuu[at]gmail.com

この辞書は以下の研究費で作っています:

「北琉球沖縄語伊平屋方言の電子辞書の構築」特別研究員奨励費 20F20003(受け入れ研究者:下地理則, 外国人研究員 CARLINO SALVATORE)。

伊平屋方言のデータは次の研究費で収集してきました:

国立国語研究所 「日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成」(プロジェクトリーダー 木部暢子)

科研費基盤研究(B)「比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」(研究代表者 五十嵐陽介)